政治的にベストとは、どんなに騒ごうがつぶせるということ。東京から1500キロも離れていて、反対する県民の姿は見えないし、聞こえない。そこへ危ないものを押しこんでおけば自分たちは安全……。

 

 そうした思いを国民みんなが持っているのだとしたら、沖縄に基地が集中する構造的差別は政府だけがやっているのではなく、無意識のうちに、国民もそこへ加担しているのではないか。この状況を変えていかなければいけません

 

安全が脅かされる現実を見つめて

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 日米安保条約では、日本に米軍基地を置くことを前提としている。そして世論調査では、日米安保を支持する人は約8割と圧倒的に多い。

 

日米安保の恩恵を受けたい、日本を守ってもらうために米軍基地が必要だというなら、その負担も全国で平等に担うべきではないでしょうか」

 

 戦後73年がたち、日本に復帰して46年を経てもなお、沖縄では米軍関係者による事件や事故が絶えない。

 

 昨年末、米軍ヘリからの落下物事故があった普天間第二小学校(宜野湾市)では、事故後も上空を通過する米軍機によって授業が中断され、その都度、子どもたちは避難を強いられている。誰もが当然の権利として持つ「平和で安全な暮らし」が脅かされているのが現状だ。

 

「民主主義にしろ、地方自治にしろ、憲法で謳われていることと現実との矛盾がいちばん表だって現れている場所が沖縄。自民党は“押し付け憲法だから変えたい”というけれど、世界的に評価されている憲法に対して、押し付けられたからダメという議論はどうかと思う」

 

 武力によって外交交渉しないことが盛り込まれている憲法9条があったから、国防に回す金が戦後復興に回された。そのためいまの繁栄がある、と稲嶺さんは強調する。

 

「日本はアメリカの武力、核の傘下で、ものも言えないで属国、隷属と言われている状況。憲法を変える前に、(事件・事故が起きても捜査権や裁判権を持てない)『日米地位協定』を変えるべきではないか。憲法を変えようとするより、よほど簡単にできるはず。改憲を言う前にやることがあるのでは?」

 

 今年6月23日の慰霊の日、沖縄全戦没者追悼式で朗読された「平和の詩」の一節を引用しつつ、稲嶺さんは言う。

 

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「なぜなら、未来は、この瞬間の延長線上にあるからだ。つまり、未来は、いまなんだ。いまの行動によって、次の世代が生きる未来が決まっていく。だから、現実から目をそらさないでほしいですね。沖縄のことも、自分が住んでいる町や国のことも、これでいいのかと主権者の1人として見つめてほしい